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2005年10月29日 (土)

雨よ,やめ!

051029_2 高校野球の場合,夏の甲子園にたくさん高3生が出場するが,日本全国の多くの高校の多くの部活動では,高2で部活動を「引退」する生徒が多い。僕の勤務校ではどうなんだろう?他の部活の事情はあまり良く知らないが,僕が顧問(中学副部長・会計係)をしている軟式野球部の場合,高3は夏の全国大会出場までがんばる。だから,南関東大会を制して全国大会に出場した一昨年の場合,8月末まで野球をやっていた。

昨年秋と今年の春,関東大会を連覇した本校野球部だが,夏の大会は県予選の初戦で敗れてしまった。だから,今年の高3は実質7月で引退していた。

しかし,恒例となっている引退試合が,今日行われた。例年この時期に,高3チームと高2チームが,「高3引退試合」を行うのだ。本校ではこういう,高3の「引退セレモニー」を「追っ払い会」と言っている。

高3・高2・高1は普段は一つのチームとして戦っているが,今回は高3対高2。高1は審判。中3はボールボーイである。また,普段怖い監督も今日はベンチ入りせず,試合は全部生徒がしきって行われる。高校の監督も部長(どちらも教員)も野球場の外から目を細めて見ていた。

僕は中学担当の副部長であるため,あまり関係ないのだが,試合を観戦しながら,特に応援したくなる生徒がいた。それは,現在も高3の部員であるが,高校1年生の頃に,すでに「ベンチ入り」を諦めざるを得ず,しかし,退部することなく,後輩(中学生)の指導にまわっていた生徒たちだ。中学担当の顧問である僕にとって,彼らにはとても助けられた。野球にまったくド素人の僕なのに,一応顧問として尊重してくれた人たちだ。この代には3人いたのだが,一人は残念ながら今日不参加だった。しかし,あとの二人は試合に出場した!中学生に,試合ができるように指導してくれた彼らだが,彼ら自身がプレーしている姿を初めて見た僕は痛く感動した。うち一人のI君は中学生の頃はピッチャーだったのだ。今日の高3は,エースのM君は1イニングしか投げずに,いろいろな選手が投げた。結果的にはそのお陰で7失点だったが。一方,高2チームは現エースが8回を投げ,ストッパーが最終回を押さえ,2失点しか許さず,高2の勝利だった。

前述の指導係のI君は,8回,9回の2イニングを投げた。8回こそ後輩に1点を許したものの,最終回はピシャリと押さえた。他の部員が笑顔を見せ楽しみながらやっている中,I君はとても緊張しているように見えた。I君は他の誰よりも入念にブルペン(投球練習場所)でウォーミング・アップをしていた。I君の出場機会は8,9回頃と言われていたらしかった。もともと断続的に小雨が降る中行われていた試合であったが,7回頃,急に雨脚が強くなった。僕はブルペンから試合を見ていたので,ウォーミング・アップするI君から5メートルくらいの所にいたのだが,最後の出場機会のためにずっとウォーミング・アップしていたI君は,ひととき息をつき,空を見上げ,「出られないかもしれない」と小さく呟いた。そして,再び出番を待ってウォーミング・アップを続けた。僕は実は雨男なのだが,このときばかりは,「雨よやめ」と念じた。

幸い雨は再び小降りになり,I君はマウンドに立つことが出来,先ほど書いたような投球を見せてくれた。僕はI君のような奴が好きだ。因みに彼のウォーミング・アップの相手として,ずっとブルペンで球を受けていたのは,同じく指導係のN君だった。彼も代走として出場した。果敢にも2塁盗塁を敢行したが,後輩のキャッチャーがセカンド・ベース上へ矢のような球を送り,盗塁失敗に終わった。

彼らが野球をしながら追い続けたものは白球だけではなかった。彼らは野球場から去るが,追い続けるものは変わらないのではないだろうか。いや。そういう奴もいていいし,そうじゃない奴もいていいんだろう。

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