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2005年12月13日 (火)

アサーション・トレーニング

(大矢正則・記)
先日,保護者面談中で,あるお母様にアサーション・トレーニングについてお話しさせていただいた。そのお母様はお子さんのコミュニケーション能力を養いたいと仰られたからだ。

以前,「セルフエスティーム&ストレスマネジメントスキル」(11月25日)の項でライフスキルとして,第一に必要なのが,自尊感情,自己肯定感(=セルフエスティーム)であると書いた。その上に,人間関係を損なうことなく上手に自分の考えを伝えたり,聴いたりする技能・能力(=コミュニケーションスキル) が形成されると書いたが,実はこの二つのスキルは表裏一体をなしている。セルフエスティームの豊かな人は他人と上手にコミュニケーションを持てるが,セルフエスティームが乏しいと他人ともなかなかうまくやっていけず,孤立しがちになる。

このセルフエスティームとコミュニケーションスキルを育てるのに,ここ数年注目されているのが,アサーション・トレーニングだ。

アサーションとは「自分の気持ち・考え・意見・希望などを率直に正直にしかも適切な方法で自己表現すること」であり,「自分と相手の相互を尊重しようという精神で行うコミュニケーション」のことである。(園田雅代・中釜洋子『子どものためのアサーショングループワーク』金子書房 2000年)051213

自己表現するときの姿勢は三つの大別される。一つ目は,自分を抑えて相手を立てる「非主張的」表現。二つ目は自分を主張して相手を抑えたり,無視する「攻撃的」表現。この二つは,ドラえもんの登場人物のび太君とジャイアンが典型。のび太君は,代わって問題を解決してくれるドラえもん無しでは,ただのいじけ虫(のび太君ごめん)。ジャイアンは威圧的で,実際にこんなヤツがいたら,やっぱり付き合うのに疲れる。それで,第三の自己表現法が,自分も相手も大切にするアサーティヴ(assertive)な表現。ドラえもんの登場人物で言えば,しずかちゃんがこの構えでしゃべっている。

典型的な例として,ジャイアンが,のび太としずかちゃんを,学校から帰った後,公園で遊ぼうと誘う場面を想定してみる。

ジャイアン:
オイ,今日,家に帰ったら,みんなで公園で遊ぶからすぐ来いよ!(まったく相手の都合を考えていない)


のび太:
(本当は他に用事があるので戸惑いながら)あっ,あ~。それじゃあ,行くよ。(そう言っておいて,行きたくないとドラえもんに相談する)


しずかちゃん:
あら~。みんなで遊ぶなんて楽しそうね。でも,今日は前から約束していた用事があるの。明日と明後日なら大丈夫なので,また誘ってもらえると嬉しいわ。

こんな具合である。
実は,今の中学生はのび太型が多い。ドラえもんはいないから,直接言えないことを親や教師に言ってくることもある。それはそれできちんと対応するように心掛けている。「自分で言う」のがベストだけれど,それが言えないから親や教師を頼ってきているのだから,一概に「そんなこと自分で言え」とはならないと思う。もちろん,人と状況によっては,「自分で言えない?」と助言することもある。

しかし,並行してホームルームなどを通して,しずかちゃんの言い方の良さを伝えることもしてきた。これをアサーション・トレーニングという。4~5年前に中1を担任したときは,入学後の半年間,ホームルームを使って段階的にアサーション・トレーニングを行った。なぜ中1の最初かというと,現在の子どもたちに低下しているコミュニケーションスキルを高めるためであった。アサーション・トレーニングは,コミュニケーションスキルの獲得と共に,その土台となるセルフエスティーム(自尊感情,自己肯定感)も高める。なぜなら,アサーティヴの第一段階は自己確認と自己表現だからである。(第二段階は相手理解と相手尊重である。先ほどのしずかちゃんの台詞にそれが現れています。)

さて,シッタカブッて,アサーションのことをいろいろ書いてしまったが,実はこれを書いた契機は,昨日,提出された宿題ノートにコメントを書いていて,ふと,自分のコメントの非アサーティヴさに気づいたからだ。私の教科は数学なので計算練習の宿題を出した。解答も配ってあるので,答合わせと間違え直しもして提出してもらうことになっている(いなや数学の先生と思わないでおくんやす)。しかし,提出されたノートの中に,数行の途中計算を直さずに,最終結果だけ赤ペンで直してあるものがあった。こういうものに対しては,私はこれまで検印の後に,「間違えたところから直すこと」とだけコメントを書いてきた。しかし,考えてみたら,これは相手(生徒)に言いたいことの一部であった。次のように言い直してみた。「間違えたところを発見し、そこから直すと実力が付きます」。

また,締め切りが迫ってきて慌ててやったであろう某君の宿題ノートは,問題は解いてあるが,まったく答合わせをしていなかった。私はこういった提出であっても0点ではなくある程度の評価をしている。提出しないよりずっと良いからである。しかし,こういったものにも,「答合わせをしておくこと」とだけコメントすることが多かった。これも昨日は,アサーティヴを意識して,「ここまでよくやりました。あとは答え合わせだけです」と書いてみた。

おそらく教員を始めた頃は,のび太君のような感じの教師だった気がする。なかなか思っていることを生徒に言えず,しっくり来なかった。しかし,いつの間にかaggressiveな対応をしていることに鈍感になっていたことを告白せずるを得ない。

面談であるお母様にアサーション・トレーニングをご紹介したが,私自身も改めて,アサーション・トレーニングをしたい。随分長いこと教員をやってしまったが,まだ間に合うかもしれない・・・。

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