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2006年1月 4日 (水)

早めに弱音を吐く

『ブッタとシッタカブッタ』(メディアファクトリー 1993)は前にも紹介したが,僕の愛読書(マンガですが)の一つ。その頃はそんな言葉はなかったが,今で言う「癒し本」である。

さて,最近はコンビニなどにも,「癒し本」として,自分大好きポジティブシンキング系の本が必ず数冊置かれている。しかし,パラパラと中を見ると「そのままでいいんだよ」ばかりでイマイチ読む気になれない。自分がイヤでイヤでしかたない人に,そのままで良いよとかそんな自分を好きになりなさいということほどナンセンスなことはない。自分を好きになれない人が,そんな本をまともに読んだら,自分を好きになれない自分がますますイヤになり自分を責め,落ち込む。自分がこのままで良いと思っていたら,このままの自分で良いと書いてある本なんて読まない。変なたとえだが,裸の人に向かって,服を脱げと言っているようなものだ。こういった本は,どうやら,そういう本を読む必要のない人。つまり,自分が大好きで,このままの自分が受け容れられている人が,自分や誰かのために買っているのではないだろうか?

そんな中で,以前紹介した中島義道氏の『生きることも死ぬこともイヤな人のための本』(日本経済新聞社 2005年9月),『働くことがイヤな人のための本』(同 2001年),『カイン』(講談社 2002年),『孤独について』(文春新書 1998年)は,超・現実掘り下げ型の本で,「孤独で敏感な魂」に響く。

さて,最近,カウンセラーの諸富祥彦氏が書いた『生きるのがつらい。』(平凡社 2005年11月)を読んだが,この本も,中島義道氏ほど強烈ではないが,脱ポジティブシンキング指向の内容の本だった。051231

この本は,昔と今では価値観も社会状況も変わっているという前提で書かれている。出たばかりの本なのであまり書いてしまうのはよくないと思うが,一つだけ。

例えば,「タフ」とは? 昔は,簡単に言えば,結果が出るまで頑張り続けることだったろう。しかし,今は人生,頑張っても必ずしも良い結果が出ないことは薄々みんな気づいている。昔は一流大学へ行けば,まあ一定レベルの企業などへの就職が約束され,終身雇用制だったので,定年まで勤め上げれば良いと考えられ,それを目指すことが簡単に薦められた。しかし,今は全部に近いくらいそれらは崩れた。一部にそうした社会構造が残っている部分もあるが,それもかつてのイメージとは異なってきている。大企業も倒産や吸収合併,あるいははやりの「合法的」会社乗っ取りでなくなる時代である。かつてのエリート戦士たちはリストラの憂き目に遭う。この情報化の時代,誰もがそれに気づいている。旧世代(諸富氏の著書では1960年生まれ以上)はいまだにそれにしがみつき,旧態依然とした価値観を持っているが,それ以降の世代の価値観は,違ってきているという。そんな,社会全体が目標を見失った時代に,「タフ」な生き方とは?「周囲の人に弱音を吐けること,助けを求めることができること」だと分析する。特に「早めに弱音を吐く」ことが良いという。立ち直りも早いからだ。真面目な人や責任感の強すぎる人は,助けをなかなか求められないので,これからは要注意だ。

弱音を吐くのがタフな生き方。。。確かにそうだなあと思う。
「一度も弱音を吐かなかった」はこれからは美徳とはならない時代だと思う。弱音も吐かずに倒れてしまっては,結果として自分も他人も大切にしたことにならない。

「風邪には早めのルル」とかいうコマーシャルがあるが,これからは心も風邪を引きやすい時代。そういうときは,「早めの弱音」でいきましょう。

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コメント

トラックバック、ありがとうございました。
「生きるのがつらい。」、ぜひ読んでみたいです。
辛い時は「辛い」と、堂々と言えるような社会であってほしいですね。

気合とか根性とか、過度の頑張りとか。
もうやめようよ、そんなこと…と思ってしまいます。(笑)

投稿: stella maris | 2006年1月 4日 (水) 01時49分

こんばんわ、先日は私のブログでコメントくださってありがとうございました。ctさまのコメントうれしかったです。
>弱音を吐くのがタフな生き方。。。確かにそう>だなあと思う。
今回書き込みさせていただいたのは、本日の記事のタイトルにひかれたからです。そうですね、早く弱音を吐くというのは弱いことではなく自分の弱さを認め、それでもある目的を達成するために人の力が必要だから助けてくださいといえる「つよさ」なんだと思います。

会社においても特にそうで、プロジェクト推進ではやはり、ココロの病になる人がおおい。そういうひとは自分ができないことが認めるのが辛くて、(たいてい頭いい人に多い)追い込んでしまうのです、自分を。

プライベートにおいても早めに弱音を吐くことが自分にとっても周りにとってもいいように思います。
「そのままでいいよ」的な本には私も実は同じことを感じていました。

投稿: piyo | 2006年1月 4日 (水) 23時33分

本日の記事には関係ないのですが、遠藤周作は私も結構好きでした。
海と毒薬、ピアノ協奏曲二十一番、真昼の悪魔。
ピアノ協奏曲二十一番の短編の中の「最後の晩餐」死ぬ間際の牧師が人を食べたと告白するシーン。確か告白される側も自分の罪にずっと悩んでいていて、この告白を聞いて救われるそういう話だったように記憶しています。(違ったかな)
王妃マリーアントワネット、などなど。あと何作か本棚に並んでいますが、覚えているのは先ほどの3冊ですね。
あの方もクリスチャンなんですよね。
私はクリスチャンではありませんが、大学はミッション系でした。礼拝堂があり、キリスト教学が必修で(落とすと落第です!)した。
すいません、ながながと・・・

投稿: piyo | 2006年1月 4日 (水) 23時40分

>>stella marisさん

>「生きるのがつらい。」、ぜひ読んでみたいです。
ふんふん。
でも,この前に,中島義道著『生きることも死ぬこともイヤな人のための本』(日本経済新聞社 年)がイチオシです!!!

>気合とか根性とか、過度の頑張りとか。
>もうやめようよ、そんなこと…と思ってしまいます

そうですね~。
同感です。

投稿: ct(Magis) | 2006年1月 7日 (土) 14時25分

>>piyoさんへ

昨日(6日)から仕事が始まったのでしたね。
「勝負の日」,「今月が勝負」とのことでしたが・・・。
弱音を吐きながら,栄光の勝利を勝ち取って下さい。
あと,遠藤作品の
>海と毒薬、ピアノ協奏曲二十一番、真昼の悪魔
について。
最後の一冊だけ僕は読んでいません。
他の2冊も20年近く前に読んだので,詳細は忘れましたが,
「海と毒薬」は確か戦時下の医学部における人体実験の話でしたか?
人間の恐ろしさ,罪がテーマだったと思います。
ただ,あの中で,学者夫人のドイツ人(多分クリスチャン)を,
遠藤は,糾弾して書いていたのを覚えています。
>王妃マリーアントワネット、などなど。あと何作か本棚に並んでいますが
これも名作ですね。
「ベルサイユの薔薇」の本格小説版といったところでしょうか。
また,ここに遊びに来てください。
私もそちらにお邪魔させてもらいます。

投稿: ct | 2006年1月 7日 (土) 14時38分

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いきなりですが、教会にどうしても馬が合わない方がいらっしゃいます 同じ日に受洗した方で、わたしよりちょっと年上の男性なんですが、 とても真面目な方で、精力的に教会活動に参加してらっしゃいます メインで動かれているのは、教会学校のリーダーとしてでしょうか この年でオルガンを弾いていると、子供たちとの行事に関わることが多くなります わたしは直接的に教会学校に関わっているわけではないんですが、 子供ミサとか、合宿とか、あらゆる場面で関わりを持っているわけです が、それがどうにも彼は気... [続きを読む]

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