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2006年1月 3日 (火)

福音は小さな声でも響き渡る

初詣に詣る日本人の宗教性について,昨日は書いた。今日はこのときに見た光景の中で一つだけ気になった(というか残念だった)ことを書きたいと思う。

実は鶴岡八幡宮の入口から100メートルと離れない位置に,「罪を悔い改めなければ神の救いはありません」。「キリストの再臨は来られています」。と,両面に書かれた,たたみ一畳ほどの看板を持った青年が立っていた。同時にスピーカーからも,悔い改めを薦める短いメッセージが告げられていた。「お集まりのみなさん,よく聴いて下さい。あなたの罪に気づいて下さい。罪を悔い改めなければ救いはありません。救い主はすでにこの世に来ています。手遅れにならないうちに罪を悔い改めましょう。」私は瞬間的にとても厭な感じがしたが,鎌倉にはたくさんの宗派の教会があるので,ちょっと興味が湧き「おはようございます。どちらの教会からですか?」と尋ねてみた。すると,看板を持った彼は,最初困ったような顔をしたが,結局,元の無表情に戻り,何も答えてくれなかった。私は,悪いことをしたような気になり,「寒い中ご苦労様」といって足早に去った。

そこから私の所属教会までは5分も歩かずに着く距離なのだが,その間に,まったく同じメッセージのテープが流れるスピーカーを体に2個付け,ゆっくりと歩いている外国人(西洋人だと思う)が前から歩いてきた。「お集まりのみなさん,よく聴いて下さい。あなたの罪に気づいて下さい。罪を悔い改めなければ・・・」私が聞くともなく,メッセージに耳を傾けていると,今度は彼から話しかけてきた。さっきの若者とはだいぶ違い,流暢な日本語である。

彼:聖書に興味がありますか?
私:はい。これから教会に行きます。
彼:どちらの教会ですか?
私:(建物を指さし)そこの教会です。
彼:あ~ん。そこは・・・。
私:カトリックです。あなたはどちらの教会から?
彼:教会はありません。個人で来ています。ボランティアです。
私:どちらの国から?(出身国を聞いたつもり)
彼:あ~。○○です。(○○は日本の都道府県名です)
私:(意外な答に戸惑い)そうですか。では,お気をつけて(と言って去ろうとした)。
彼:あ~。あなたの教会は?
私:カトリックです
彼:カトリック?
私:はい。ローマの,バチカンの。
彼:ああ,ヨハネ・パウロですね。
私:ええ,昨年から変わりましたが・・・。
彼:あなたの教会では,キリストがこの世にすでに来ていることを知っていますか?

こんな具合に話は展開していった。私は,(実際にミサ開始時刻になったので)「ごめんなさい。ミサが始まるので」と言って教会の中へ入っていった。

ミサの様子(『神の母聖マリア』のミサ)は一昨日書いたので,今日は書かない。

さて,ミサが終わり,再び八幡さまの前を通って家路を急いだ。すると,また先ほどの外国人に会った。大変な人混みだったので,私は見つからずに通過することができた。八幡さまの入口近くの無言の真面目そうな青年も相変わらず,重そうな看板を持って立っていた。

この日は曇天で,今にも雪が降り出しそうな鎌倉地方であったが,昨日書いた「何事のおはしますかはしらねどもかたじけなさに涙こほるる」といった深い宗教心をもって,寒い中を県内や都内からこの日だけで約100万人の老若男女が集まってきている。そして,それぞれの思いを込めて,祠の前で手を打ち鳴らし,頭を垂れ,お賽銭を投げる。「吉よ出ろ」と願いを込めて,おみくじを引いたりしている。

そんな中で,このスピーカーの言っている「お集まりのみなさん,よく聴いて下さい。あなたの罪に気づいて下さい。罪を悔い改めなければ救いはありません。」はおそらく大多数の人々の耳には,真意は届いていないだろう。それでいいと思う。なぜなら,もし耳に入れば,せっかく気持ちよく参拝した人々の心を逆撫でするだけであろうから。本来福音なのだが,雑音にしかならないだろうから。

福音は,響かせなければ意味はない。しかしそれにはスピーカーも看板もいらない。場所と時間と「人」さえ調えば,小さな声でも響き渡る。

教会帰りの私は,他の人と同じようにスピーカーからの雑音に背を向け,家路を急いだ。寒かったので途中でたい焼きを5個買った。家族で食べようと思ったからだ。しかし,ミサ帰りのため,お腹が空いていたので,一つを袋から取り出し,参拝帰りの人に紛れて歩きながら食べてしまった。一応,しっぽまであんこが入っていたが,お腹の皮が厚かったかな。あっ,普段はこんなことはしませんよ。でも,正月なんだから,まあ,いいじゃぁありませんか。おさかなはキリストのいのちのシンボルでもありますし。

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コメント

去年でしたでしょうか
いやおととしかな?
選挙の車みたいなもので、
上の部分に看板が出ててそこに
{聖書}と書いてあって
スピーカーが二つ付いてて
「信じなければ地獄におちます」と
流れていました

あれは何なんでしょうね
私は興味がありましたが、何を頼まれても
断れない性分なので
怖いところにひきずりこまれてもやだと
原付で逃げました
でも話をきいてみたかったような気もするなぁ・・・

投稿: maria michaela | 2006年1月 5日 (木) 11時28分

>>maria michaelaさん

「信じなければ地獄におちます」はこわ~いですね。
セカンド・チャンスを認めないプロテスタント系でも,
そんなことは前面に出さないでしょうから・・・。
きっと,危険な集団だったのでしょう。
>怖いところにひきずりこまれてもやだと
>原付で逃げました
はい。正解です。
でも,原付,気をつけて運転してくださいね。

投稿: ct | 2006年1月 7日 (土) 14時42分

浅草で仕事しています。
飲食店なので正月は休めません。
ここでも「悔い改めよ」スピーカーの人たちが数人
毎年、「偶像崇拝非難」を初詣客に行っています。
今年は、なんと献血車がドーンと入り、
「悔い改めよ」をかき消すマイク音声で
「輸血の為の血が足りませーん」
「献血にご協力下さーい」
と呼びかけています。
もしかしたら、「悔い改めよ」スピーカーの人たちは
輸血を嫌う教団の方々だったとしたら
してやったりと言うかちょっと小気味いいかな?
と思いました。

投稿: m.A.T.u. | 2007年1月 3日 (水) 16時36分

>>m.A.T.u.さんへ

コメントをありがとうございました。
浅草でのお仕事となると,お正月はかき入れ時とはいえ,
お疲れ様です。

二つのスピーカー合戦。
なんとも面白い(といっては失礼ですね)光景を
ご覧になったのですね。

良い年となりますように。

投稿: ct(Magis) | 2007年1月 3日 (水) 17時06分

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