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2006年1月25日 (水)

構成的グループエンカウンター3<カウンセリングの理論>

構成的グループエンカウンター(以下,エンカウンターと書きます)は,「応用カウンセリング」といったカテゴリーに分類されるという話で前回は終わりましたので,今日はその辺りを深めます。

エンカウンターが急速に広まった要因として,比較的容易に実践できる点があげられます。それは単にマニュアル本が多く出版されているからではありません。エンカウンターが,いわゆる折衷主義(eclecticism)の立場をとっているから,誰でも比較的容易に実践できるのだと私は考えます。つまり,実践者の個性や対象集団の特質に合わせて実施することが可能な(汎い意味での)カウンセリングなのです。

エンカウンターのとる折衷主義とは,理論に実践を合わせるのではなく,さまざまな理論の中から個々の現場にフィットする部分を取り出し利用する(國分康孝『エンカウンター』(誠信書房 1981年)という点に特色があるのですが,エンカウンターの折衷主義を語る上では,エンカウンターの歴史およびカウンセリングとの関係について概観しておく必要があると思いますので,少し触れておきます。

エンカウンター(ここではまだ“構成的”ではない)の起源は,1949年にアメリカのNational Training Laboratories(NTL)が行ったTグループであるといわれています(前出『エンカウンター』)。その意味では,エンカウンターは初めからグループで実施されています(R.W.Siroka,E.K.Siroka,G.A.Schloss著,伊東博他訳『グループ・エンカウンター入門』誠信書房 1976年)。その後,来談者中心療法のカール・ロジャーズ(C.Rogers,1902~1987),ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ(F.Perls,1893~1970),交流分析のエリック・バーン(E.Berne,1910~1970)らが,個別カウンセリングの理論を応用した形でグループカウンセリングを行うようになるのですが,1960年代に全盛を迎えるこれらのグループ・アプローチもまた,エンカウンター・ムーブメントと称されるようになり(前出『エンカウンター』),今日のさまざまなグループ・アプローチの源流となっています。

その中で,構成的グループエンカウンターは,Tグループとは起源の異なるアメリカ西海岸のグループ,すなわちロジャーズらのカウンセリング・ワークショップ(これ自体は非構成的グループだったのですが)やカリフォルニアのエスリン研究所(Esalen Institute)の流れを汲んでいて,特にエスリン研究所におけるパールズのゲシュタルト療法ワークショップが,直接の影響を及ぼしています。エスリン研究所で学んだ國分康孝先生(日本教育カウンセラー学会・会長)は,1970年代後半から,菅沼憲治氏らとともに,エンカウンターに関する研究と実践報告を,日本相談学会の学会誌に次々と発表していきました。それがもととなり専門家の間で,特に大学生を対象とした実践が静かに広がっていったのです。それから20余年経ち,5年ほど前から,小中高等学校において多くの実践が報告されています。時代がそれを要請しているからでしょう。

さて,エンカウンターがこのようにカウンセリングの応用として発展してきた以上,カウンセリングにおける折衷主義がエンカウンターの折衷主義に大きく影響を与えています。

『カウンセリングの理論』(國分康孝著 誠信書房 1980年)では,カウンセリングを,「言語的および非言語的コミュニケーションを通して,相手の行動の変容を援助する人間関係である」と定義した上で,カウンセリング理論を,(1)精神分析的理論 (2)自己理論 (3)行動療法的理論 (4)特性・因子理論 (5)実存主義的理論 (6)ゲシュタルト療法 (7)交流分析 (8)論理療法 (9)折衷理論 (10)その他 の10グループ(ただし,(9)と(10)は他と分類の性格が異なるので8グループといった方がよいかもしれませんね)に分類しています。なお,カウンセリング理論とは,a.人間観 b.性格論 c.問題行動論(問題行動発生のメカニズム) d.目標論(治るとは何か) e.カウンセラーの役割 f.クライエントの役割 g.限界(その理論の適用範囲を示すもの)の総称であり,先ほどの(1)~(8)のどのカウンセリング理論もそれぞれが,a~gのすべてに対する答を一通り用意しています。したがって,どれか一つのカウンセリング理論を根拠にしてカウンセリングを実施することは可能ですし,それが普通であった時代もあります。また,今でも一つの理論を貫き通してカウンセリングにあたるカウンセラーもいます。しかし,『カウンセリングの理論』の立場では(私もここに立脚しています),カウンセラーはクライエントを助けるのに役立つ限り,そして自分の気質に合う限り,できるだけ多様な理論にふれてそれを自分なりに統合しなければならない」のです。これが折衷主義の本質です。

カウンセリングの一種であるエンカウンターもこの折衷主義の立場をとります。ただし,エンカウンターはカウンセリングの一つではありますが,旧型のカウンセリング(もしくはあまり正しくないカウンセリング観)のように治すことを目的としているのではありません。エンカウンターはごく普通の教育現場―――たとえば,学級開き,ホームルーム,合宿,教員研修,保護者会など―――で行う開発的・教育的カウンセリング(Developmental Counseling=応用カウンセリング)なのです。

では,エンカウンターの折衷性とははどんなものかということになりますが,これについては次回以降に具体的に書きたいと思います。

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