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2006年2月 6日 (月)

「治る」って何だろう?

一昨日まで連載していた「構成的グループエンカウンター」の第5回目(1月30日)の記事に対して,PIYOさんが大変貴重なコメントを下さいました。感謝申し上げます。コメント全文はここをクリックして下さい
ところで,PIYOさんのコメントに対するお返事が大変長いものとなってしまいました。また,内容も一般的なものとなりましたので,改めて一つの記事として掲載させていただきます。「構成的グループエンカウンター」なんていうあまり一般的ではない話題へコメントを寄せて下さり,この記事を書くきっかけを作って下さったPIYOさんには特に感謝申し上げます。
さて,本題に入ります。

>カウンセリング、これは主に精神疾患をもった方に行われるのですか?それとも、疾患の有無に関わらず悩みの相談に乗ってくれるカウンセリングなのですか?

についてですが,これは実は極めて答えにくい質問です。
それで,コメントに対する返答が遅くなってしまいました。

まず,前半の「カウンセリング、これは主に精神疾患をもった方に行われるのですか?」についてですが,一口に精神疾患といっても,人によって捉え方がまちまちです。

一般には,米国精神医学会の出しているDSMという精神疾患をカテゴライズした本がガイドラインを示していますが,カウンセラーの中には,この本の立場を採らない人もいます。

また,この本によると,一般の人は精神疾患と思わない病気,例えば,6ヶ月間以上にわたって繰り返される窃触症や窃視症(平たくいえば,痴漢や覗きです),フェチズムなども性障害という精神疾患に分類されます。

さらに,どんな精神疾患による障害にもそれぞれ重度から軽度まで幅があります。

さて,これらについてのカウンセリングですが,有効な疾患(というよりも症状)と,まったくそうでないものがあります。
しかし,ここで「では,そのカウンセリングって何」,
カウンセリングは何の目的でするの?」,
治る見込みがなければカウンセリングはしないの?」という問題に突き当たります。

さらに,突き詰めると,
精神疾患が治るって,どういうこと」,
神疾患って治るものなの」,
どんな精神疾患でも治さなければいけないの
精神疾患は一つも持っていてはいけないの
というもっと深い問題に突き当たってしまうのです。

これではPIYOさんのご質問に対する答になっていませんが,これが本当のところです。

次に,「疾患の有無に関わらず悩みの相談に乗ってくれるカウンセリングなのですか?」についてですが,これまた難問です。
しかし,これに対する答えもほぼ上に述べたことに収斂すると思います。
それはまた,カウンセラーが自分のカウンセリングをどう捉えているかにもよります。
そして,これは良い悪いの問題でもありません。
ただし,カウンセラーの仕事で結構大事なのは,来訪者が自分のできるカウンセリングの範疇のクライエントであるかどうかを見極めることです。
カウンセラーの資格は民間認定のものが非常に多く(他に学会認定があります。また,臨床心理士については触れずにおきます),資格だけは持っているけれど実践経験がない人も少なくありません。
逆に,どこからも認定されていないけれど,実に有能なカウンセラーもいます。
また,いろいろな,○○セラピーというのも流行っていますよね。
ただ,あまり特殊な方法を用いるカウンセリング(そしてセラピーも)には,深入りしない方が良いかと思います。

ささやかな結論めいたことを申し上げますと,
どなたでもカウンセリングに気楽に行って下さい。
最初に行くところは,できれば,医師とカウンセラーの両方がいるところ(つまり病院か診療所)が良いと思います。
カウンセラーだけがいるところに行く場合は,信頼できる人に聞いてからの方が良いかもしれません。
そして,行ってみていやだったら,次は別の病院やカウンセラーを当たって下さい。
カウンセリングの可否には,相性が大きな要因を占めます。
何人か当たるうちに,この人はと思う医師かカウンセラーに出会えると思います。
あと,料金についてですが,病院や診療所でない場合,
当然,健康保険外ですから,ちょっとかかります。
同じく保険のきかない鍼灸院よりちょっと高めだと思って下さい。
ときどき,べらぼうに高い料金設定のところ(1時間3万円とか5万円とか)がありますが,
料金と内容に正の相関関係はありません。
経験的には,むしろ逆の場合が多いです。

また,カウンセリングは,今,自分で心病んでいる人以外の方にもお勧めしたいです。
風邪をうがいや手洗いで防止するように,心の病も防止できる可能性が高いのです。
もちろん,精神疾患の種類によっては予防が難しいものもありますが,
たとえば,うつ病に代表される気分障害は,
気楽に相談できる心療内科・精神神経科の医師やカウンセラーを,
いわば,ホーム・ドクター(かかりつけ)のように持っているとすぐに相談できるので,
症状の進行を未然に防ぐことが可能となります。

しかし,他の病気と同じで,心の病も自覚症状が出るまではなかなか通院や相談をしないもの。
いや,症状が(物理的に)「見えない」場合が多いので,最も通院開始が遅くなる病なのかもしれません。
そのために,企業や学校などで,予防的・教育的カウンセリング(例えば構成的グループエンカウンター,ピア・サポートなど)の導入が必要だと思います。しかしながら,カウンセリングのこの分野(応用カウンセリング,集団カウンセリング)は軽視されてきたと思います。

私の所属している日本教育カウンセラー協会は,この分野のエキスパートを養成することを大きな目的として設立・運営されています。(すいません。最後ちょっとPRみたいですね)

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コメント

私の拙い質問に丁寧にお答えいただきありがとうございました。

「どんな精神疾患でも治さなければいけないの?」

この一言が心に残りました。

というのは、異常に潔癖であるということを例に挙げますと、それゆえ社会生活に困難をきたすレベルであれば治癒する必要があるのかもしれませんが、潔癖であるが故に清掃が他の人より行き届いていることでその道のプロになったりということもありえると思うのです。

要は程度の問題で、もって行く方向によってはそれが凡人(あえてそう書きます)では想いもよらない発想に結びついてプラスになったりとか。
ありえないことではないなと思い、それならばそういうレベルならば直す必要もないのでは、、、と。

元コイビトの彼女が統合失調症であるだけではなく、ものすごく昔、精神科の医者になりたいと思ったことがあり、少しカウンセリングなどには興味がありました。

又、ブログ拝見して、勉強させていただきます。

ありがとうございました。

投稿: piyo | 2006年2月 7日 (火) 23時41分

>>piyoさん
早速のコメントをありがとうございます。
>「どんな精神疾患でも治さなければいけないの?」
>この一言が心に残りました。
とのこと。そして,具体的な例を挙げて下さったので,
私の拙い記事も,piyoさんのコメントと併せて読んでいただくことによって,分かり易くなったと思います。
ところで,piyoさんは精神科医になりたいと思ったことがあるのですね。
僕はまもなく半世紀も生きる身となってしまいましたが,
ときどき,医学部受けようかな~と思うときがあります。
尤ももう受験勉強に耐えうる集中力と持久力がありませんが(^^ゞ

投稿: ct(管理者) | 2006年2月 7日 (火) 23時57分

ctさん、こんにちわ!

私自身、いろんな面で(友人に病者が何人かいる等)心の病について考える材料に事欠かないだけでなく、昨今、TV・CMで散見する「社会不安障害(SAD)」と言うものが気になって、ネット検索して

http://www.e-chiken.com/shikkan/sad.htm

と言う記事を読み、「強いか弱いかは、どの程度、『程度問題』なのかどうか判らないけど、こういった症状は、自分にもないことはない;が、これって、『病気』なのか? ある程度、努力で克服していくものではないのか」と感じました。

で、これまた、同じ記事のいちばん下の【認知行動療法】の部分を読んで、「こういうことを、知らず識らず自分でやってしまっている人は、病気だとは自覚しないうちに、直ってしまっているのかも知れない…」とも思い、「うーーーーーん」。

難しいですねぇ。

私の考えとしては、精神医療は、何が何でも「健常者」にしてしまうと言う「治療」よりも、苦しんでいる人に寄り添う「ケア」であって欲しいな…、なんて思ったりするんですが。

あるいは、健常者でも生き辛いのが「人の世」で、病者でも居心地がいいのが「天の国」、…かな。

※ココログ用のメアドをご用意しました!(例によってアンダーバーは偽装です)

投稿: らふぁえら姉さん | 2006年2月16日 (木) 03時24分

らふぁえら姉さん様へ

コメントと,SADに関するリンクをありがとうございます。ご紹介いただいた治験のこのページからは,社会不安障害の他にも,うつ病,全般性不安障害,不眠症についても,特徴,診断,症状,治療法,患者周囲の人へのメッセージなどが載せられていますね。

らふぁえら姉さん様は,

>精神医療は、何が何でも「健常者」にしてしまうと言う「治療」よりも、苦しんでいる人に寄り添う「ケア」であって欲しいな…、なんて思ったりするんですが。

とおっしゃっていますが,私も同感です。
「友人に病者が何人かいる」とのこと。
カウンセラーの諸富祥彦さんは,日本人一億人総うつ時代がやってきたと,最近の新書に書かれています。
「自分にもないことはない」。そうですね~。これは私も同じです。

投稿: ct(管理者) | 2006年2月16日 (木) 15時59分

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