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2006年2月 4日 (土)

構成的グループエンカウンター6<さあ,やってみましょう!>

『構成的グループエンカウンター』(以下,エンカウンターと書きます)についての最終回。前回まででエンカウンターとそれを支えるカウンセリングの理論に書きました。それでは,エンカウンターを行う際リーダーとなる教師は,カウンセリングの各理論をすべて知っていなければならないのかという問題に突き当たるわけですが,それについて考察してみます。

折衷主義には,各流儀(理論と技法)を選択するという側面と統合するという側面があるわけですが(國分康孝『カウンセリングの理論』誠信書房 1980年),いずれにしても,なるべく多くの方法を知っているにこしたことはありません。しかし,ここで折衷主義への批判を思い出します。それは,一つの立場を身につけるのにも非常に多くの学習や体験を要するので,複数の立場を身につけるには莫大な時間が必要であり,結局,下手の横好きになるというものです。折衷主義を批判するための理屈なのでしょうが,エンカウンターのリーダーをしようとする教師は,各理論や技法の詳細まで知っている必要はないと考えています。時間の許す限りで,各理論のポイントとなる概念や,特にエンカウンターに応用できる技法を身につければよいのではないでしょうか。また,現場に立つ教師には,現実的にそれしかできません。教師には教師の仕事があり,カウンセラーではないからです。したがって,自分の関心のある理論から始めることが良いと思います。手っ取り早いのはエンカウンターやカウンセリングの研修会に参加することかもしれません。ただし,エンカウンターの第一歩が,リーダーとしてのメンバーとのリレーションづくりであることと,それ以前の自己一致が大切であることを考えますと,ロジャーズの受容・共感的理解に関する基礎的な概念は体得する必要はありそうです。しかし,これはエンカウンター以前に教師として必要な知識です。したがって,ロジャーズを学んだことがなくても,教師なら,生徒との会話の中で日常この技法を使っているものと思われます。しかし,そういうこと(共感的態度)を意識しているのとそうでないのでは,応用面で差が出てきます。ここまででかなりいけると思うのですが,それに交流分析と論理療法の基礎的な知識が加われば,エンカウンターのリーダーを十分につとめることができます。それと,ちょっとオマケの話をすると,ロジャーズの弟子であるトマス・ゴードン(T.Gordon)のPET(Parent Effectiveness Training)やTET(Teacher Effectiveness Training)はエンカウンターのリーダーをするのに大変有益です。これはいわゆるカウンセリング理論ではなく一つの技法体系です。高野利雄氏の『やさしい教師学による対応法』(ほんの森出版 2000年)は教師にとって大変有益な本です。(『教師学』についてお知りになりたい方は,このブログ右上の方からメールでご一報下さい。講座のご案内を返信いたします)

ところで,エンカウンターのリーダーをするためには,カウンセリング理論を身につけていることよりも大切なものがあります。それは,いわゆる,リーダーシップです。なぜなら,エンカウンターの成否は,非構成的グループエンカウンターや他のグループ・アプローチに比べて,リーダーの腕に負うところが非常に大きいからです。

前述したように構成的グループエンカウンターの“構成的”とは,枠を与えるということですが,この枠こそエンカウンターの生命線です。そして,この枠を正しく与え,状況に応じて介入し,柔軟性を持ちつつも枠を堅持するのがリーダーの仕事です。したがってリーダーには,グループをまとめ,グループを動かし,メンバーひとり一人を育てる強力なリーダーシップが求めらます。そのようなリーダーとして望ましい特性として,國分久子先生は,(1) 柔軟性 (2) 感受性 (3) 自己開示 (4) フラストレーション・トレランス(欲求不満耐性) の四つをあげています(『続 構成的グループ・エンカウンター』誠信書房 2000年)。また,『エンカウンターで学校が変わる 中学校編2』(図書文化 1996年)には「うまくやろうとするな,わかろうとせよ」という一文があります。つまり,教師が,教師中心の「うまくやること」から,「わかろうとする」――生徒理解へとシフトすることから,教師とその生徒のエンカウンターが始まるというわけです。ここから,教師自身も自己との出会いが始まるということになります。このような自らのエンカウンターがないと,リーダーがつとまりません。

以上,エンカウンターのリーダーに必要な要件――カウンセリングの基礎知識とリーダーシップ――をあげましたが,考えてみれば,これらは今日,すべての教師に求められているものではないでしょうか。「エンカウンターは,教員としての資質があればだれにでもできるものである」(『エンカウンターとは何か』図書文化 2000年)は,その意味で理解したいと思います。

前回の,エンカウンターの折衷主義の議論から,今回はリーダーの要件の問題へと論点を移しました。國分康孝先生は折衷主義を「理論に自分を合わせるのではなく,各理論のなかから自分のパーソナリティにフィットする部分をとり出し,それを統合する」 (『エンカウンター』誠信書房 1981年)ものともいっています。いずれにしても,折衷主義がエンカウンターの実践を容易なものともしています。ただしそこには,容易さゆえの落とし穴もあります。その主なものは,エクササイズ偏重によって生じているといわれています。すなわち,インストラクションとシェアリングの軽視だというものです。これは,エンカウンターのねらいに対する自覚の低さとも言い換えられます(諸富祥彦『エンカウンター こんなときこうする 中学校編』図書文化 2000年)。

さて,6回に分けてアップした『構成的グループエンカウンター』について,これで終わりとします。エンカウンターが時代の要請に応えていること,構成的という本質ゆえに生徒の求めにより多く応じられること,折衷性が実践を比較的容易にしていることを述べさせていただいたわけです。

なお,このシリーズは理論編でしたが,いずれ,いくつかの実践報告をアップできると思います。

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