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2006年4月10日 (月)

中1オリエンテーション『自己紹介』

今日から3日間,中1は午前4時間授業で,午後はオリエンテーション。5時間目は生徒の自己紹介,6時間目は校内案内というプログラムでした。ここでは,私がクラスで行った自己紹介の方法について,書いておきたいと思います。

受け持ちのクラスは中1で,一クラス45人です。新入生たちにお互いに自己紹介させるにはどうしたら良いのか。私立の新入生ですから,ほとんどが知り合っていない状態です。与えられた時間は1時限(50分)。これが,たとえば,6人くらいのグループならば,端から順番に,氏名,出身小学校,最寄り駅,この学校を受験した理由,趣味,得意科目,苦手科目,将来の夢,・・・などをじっくりと話してもらえば,まあ,いろいろ質問も出てなんとかなるかもしれません。ところが,45人となるとこの方法では,1人1分程度しか持ち時間が与えられないので,氏名の他は,何か二つくらい簡単に話し,「よろしくお願いします」で終わってします。この通り一遍方式は,全員言わせたし,全員が他の全員のことを聞くことができたし,それに何より「平等に」できたしと,なんとなく自己紹介が終わった気にははなります。

しかし,この方法はあまり効果的とは言えませんし,負の側面さえあります。具体的に書きますと,

  1. 通り一遍なので,ほとんどの内容を忘れてしまい,「印象的な」ことだけが残る。そういう意味では,実は「平等に」紹介されたわけではない。
  2. そもそも自己紹介は互いに親しくなることの第一歩として行うが,この方法では親しくなることの第一歩にはならない。中1の場合はそうでもないが,雰囲気によっては余計に堅苦しくなる場合もある。
  3. 現在はコミュニケーション・スキルが低下している子どもが多く,このように特に大人数の中で,しゃべることが苦手(あるいはできない)生徒が少なからずいる。このような生徒にも,他と同じように話させることは必ずしも安心しては行えない。私学新入生では,例えば「場面かん黙」を持っている生徒の場合,訓練になるケースもあるが,ほとんどの場合,引き続き心的ストレスへと繋がる。

などが考えられます。

そんなわけで私は,大人数の場合,よほどのことがない限りこのような自己紹介の方法は避けています。では,この1時間でどのような方法で自己紹介をしてもらったかを報告します。「この1時間で全員が知り合うのではなく,この1時間を,全員が知り合うための起爆剤とする」という発想で行いました。具体的には,「(全員にではなく)特定の何人かに詳しく自分を知ってもらう」ということです。これは同時に「(全員のことは知らないが)ある人のことなら詳しく知っている」という体験を持つということになります。全員がこうした体験を持ち,その体験を分かち合うことによって,互いに親密になるという原理です。それで,今回は次のような方法で行いました。

  1. まず,クラス全体で誕生月日順に輪を作る。ただし,このとき非言語で行う。つまりジェスチャーのみでコミュニケーションを取り誕生月日順に環状に並ぶのです。人間は主に言語でコミュニケーションを取っているように見えますが,実はそうでもないらしいです。結構ジェスチャーだと言語では伝えづらいこと(例えば相手をほめることなどが典型)も,比較的抵抗なく伝えることができます。また,特にお互いに親しくない集団の場合,非言語のコミュニケーションから入る方がコミュニケーションを取りやすいようです。この活動は『バースデイチェーン』という名で知られています。私が担任しているクラスは1分30秒ほどで45人が誕生日順に並びました。これは45人の集団としてはかなり早いほうです。しかし,この活動は早く輪ができれば良いというものではありません。むしろじっくり時間をかけてジェスチャーでコミュニケーションを交わした方が,後々の活動には有効です。因みに今回は3カ所正しくない順序で並んでしまったところがありました。しかし,これはあまり問題にする必要はありません。大切なのは「正しく並ぶこと」ではなく,「より多くコミュニケーションを取る」プロセスです。そうは言っても全員間違えなく並ぶと拍手が湧くのですが・・・。
  2. 『バースデイチェーン』で隣同士になった2人をペアにし,以下の要領で互いに(通り一遍の自己紹介よりも深く)知り合います。
  3. 2人組の1人が「有名人」役,もう1人がテレビ局の「インタビュアー」役となり,(想像上の)視聴者により多くのことを知ってもらうためにインタビューをします。制限時間は2分。2分経ったら,「有名人」と「インタビュアー」の役割を交代して同じことを行いました。この活動は『インタビュー』と呼ばれています。
  4. 『インタビュー』をすると,2人組のペアはだいぶ知り合いますが,時間制限をつけているので聞き足りないことも出ます。そこで次は『質問ジャンケン』という活動をしました。この活動は,2人組でジャンケンをし,勝った人は相手に一つ質問するというものです。負けた人は質問に答えるわけですが,答えたくない時やわからない時は,パスして良しとします。「制限時間2分です。なるべくたくさんジャンケンをして,なるべくたくさん質問し合ってください」と言って始めました。この活動は「相手に感心をもって質問することで,学級内のリレーションをつくる。級友を知り,お互いを肯定的に認め合う」ということをねらいとしています。(図書文化刊『エンカウンターで学級が変わる』シリーズ。今日紹介する他の活動も多くはこのシリーズに載っています)
  5. さて,この辺まで来るとどの2人組のペアもだいぶ打ち解けてきます。『質問ジャンケン』で行ったジャンケンは実は人を打ち解けさせる魔法の技なのです。人って不思議なものでジャンケンをすると,老若男女を問わず大抵笑顔になります。そこで今度は『自分に最も影響を与えた人』について互いに語り合ってもらいました。これも時間制限付きで,最初一方の人が話している間は,ふんふんと頷く程度の反応しかしないように伝えました。2分後に話し手・聞き手の役割を交代しました。
  6. 次は,お互いに自分の『将来の夢』を語ってもらいました。これも話し手・聞き手を交代制にしそれぞれ2分で相手に自分の夢を話してもらいます。こうすると,単に「お互いに将来の夢を語り合いなさい」というよりも話し手が話しやすくなります。この時点ではこれまでの聞いてもらえた体験が活き,より抵抗なく自分の夢を語ってくれます。つまり自己開示しやすくなるわけです。(もちろんこのような自己開示のさせ方が良い悪いの議論があることは承知しています。これについてはコメントを下さい。また,私の方からもいずれ,SGEの問題点として書くつもりです)
  7. 次は,(時間があれば『私を支える言葉』を互いに伝え,聞き合うという活動を入れる予定でしたが時間の都合で割愛し)2人組最後のコミュニケーションとして,互いの『印象を語る』という活動をしました。これも話し手・聞き手を交代制にしそれぞれ1分半で相手の印象を伝え合います。ルールは2つ。ひとつは,伝える方は相手の良い点をなるべく多く伝えるということ。もうひとつは言われた方は,伝えられた良い点を素直に聞くと言うことです。
  8. さて,次はこれまでの2人組を,なるべく知り合いのいない2つずつ合体し4人組を作ってもらいました。そして4人が順番にここまでペアだった2人組の相棒を他の2人に紹介してもらいました。1人2分という時間制限をつけましたが,ここまでの活動で相手について伝えられる情報はかなりありますから,結構賑やかになりました。ここでもルールを作りました。2分間話すのは1人。他の3人は黙って聴く。たとえ,間違えたことを伝えられても紹介される人はひとまず黙って聴く。(実はこの練習って大事なんですよね。)そして,2分の紹介制限時間が終わったら,もし間違えた紹介内容があれば訂正するというものでした。訂正なし,または,訂正が終わったら4人で拍手をして終わるというふうにしました。これは別に間違えがなければ勝ちというゲームではないのですが,ほとんどの4人組が2分の制限時間後の訂正タイムでは「訂正なし」が多く,拍手はすぐに起こっていました。
  9. 次に4人組を2つ合体し8人組を作ってもらいある活動を心づもりでいたのですが,1時限の50分間を経過してしまい,8の4人組の『他己紹介』で,この時間のオリエンテーションはここまでとなりました。

考えてみれば自己紹介は何のためにするかというと,集団形成のスタートとして行います。この1時間の活動では,少なくとも2~4人はかなり知り合うことができました。少し踏み込んだ言い方をすると,「自己開示」と「他者理解」を体験したわけです。この方法は,集団形成のとして,45人が30秒とか1分とかの短時間ずつ平等に通り一遍の自己紹介をするのとはひと味違った効果があると期待して行ってみました。なお,蛇足のようですが,上記1~9の順序はとても大事で,この組み立てを甘く見ると,効果がなかったり,大変な失敗を呼びます。

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