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2006年5月16日 (火)

「私は・・・です」(TST)

高1ゼミ『自分とつきあう』。前回は開講時のアイスブレイクについて書きました。
今日は第2回目のゼミ内容を書き残します。(担当 大矢正則)

その前に,この1年間を通してゼミ『自分とつきあう』はグループ・プロセス(個と個が関わることによって,集団と個の両方の成長を促すこと)という方法をとりますが,内容的には,1学期はサイコエデュケーションの手法を用い,2学期は実存哲学的な生き方をやや堅く学び,3学期はより精神性(宗教性ではない)の高い次元へと移行するというプランでいこうと考えています。ただし,3人の受講者と私を加えた4人のグループの成長速度によって,1年間の終着駅は異なります。しかし,この終着駅は生徒や私にとって1年後の始発駅となるわけです。生徒にとっては先の長い人生ですから,まあ,ゆっくり進めようと思っています。

さて,サイコエデュケーションの手法と書きましたが,ここでは,グループ・プロセスに心理学的な手法を用いることによって,グループおよび個の精神的な発達を促し,同時に受講者は心理学そのものについても学べる教育の一方法という意味で使っています。

そこで,第2回目のゼミでは,"Twenty Statements Test"を実施しました。これは,「私は・・・」という書き出しが20個書かれた用紙を配り,その後に「○○○です」という述語を補う簡単な心理テストで,1954年にKuhnが開発したと言われています。

目的は,自己概念への気づきです。自己概念とは,自らによる自分自身の捉え方(イメージ)のことです。自己概念は,成長の糧となることもあれば,足かせとなることもあります。

まず,生徒に,用紙を配りました。そこには,「あまり深く考えず,頭に浮かんだことをそのまま簡単な文章で記入していってください」と書いておきました。(この先を読む前に,皆さんもやってみてください)

10分ほど経過すると,3人とも書く手が止まったので,今度は,結果の整理(分析)をしてもらいました。ただし,整理してもらう前に,このテスト(検査)は,あまり深いレベルの自分を分析するものではなく,比較的浅いレベルの意識を検査するものであることと,その日の気分や,少し前に遇った出来事に左右されやすいものであるということを伝えました。ただ,日常生活の有り様は,深い心理よりも表面的な意識によって左右されます。そのことも伝えてから整理を始めました。

(1)
まずは,20の「私は・・・」のうち,いくつ記述できたか数えてもらいました。だいたい10~20書ける場合が多いと言われています。これはまあ,いくつで良いのですが,5個も書けないような場合は,防衛的な傾向が極めて強いか,何らかの障害が起こっていることが考えられます。なお,念のため断っておきますが,これは良い悪いの問題ではありません。

(2)
次は記述内容についての整理で,外面的・表面的特徴に関する記述と,心理的・内面的特徴に関する記述がそれぞれどのくらい書かれているかを数えてもらいました。「私は身長が高い」,「私は横浜に住んでいる」,「私はコーヒーが好きだ」,「私は男だ」などは,外面的・表面的特徴に入ります。「私は友達が少ない方」,「私は毎日楽しい」,「私は毎日が充実している」,「私は神経質な方である」,「私は家族とよくケンカをする」,「私は悩みが多い」などは心理的・内面的特徴に入ります。子どもの場合,外面的・表面的特徴に関する記述ばかり書きますが,年令が上がるにつれて,心理的・内面的特徴に関する記述が増えていきます。また,成人でも最初の5,6個は外面的・表面的特徴を書くことが多いといわれています。これはやはり書きやすいからです。書きやすいということは,すぐに書けるということで,すぐに書けるということは,すぐに気づき,すぐに表現できるということです。大人でも普段はそれだけ表面的に生活しているということです。まあ,そうじゃなければやっていられませんが。(いちいち内面を見ていたら社会生活は営めません?)
しかし,時間経過とともにしだいに内面的なことを書くようになります。そして大人の場合20の「私は・・・」のうち,後半の記述の多くが内面的・心理的な記述となる場合が多いといわれています。
なお,子どもではないのに最初から最後まで外面的・表面的特徴の記述に終始しうる人は,自分の内面に目を向けることに対して防衛的になっているといえます。ただし,防衛的になっているのは,あくまで,「そのとき」(=TST検査時)であって,いつもそうだと決めつけてはいけません。まあ,そういう傾向があるくらいに考えておくと良いと思います。因みに私の場合,外面的・表面的特徴に関する記述が9個。心理的・内面的特徴に関する記述が11個でした。

(3)
次は記述を感情という観点から4つに分類してもらいました。

  1. 中性感情の記述(=客観的事実が記述されているもの)
  2. 肯定感情の記述(=内容に肯定的感情が付加されているもの)
  3. 否定感情の記述(=内容に否定的感情が付加されているもの)
  4. 両価感情の記述(=内容に肯定と否定の両方の感情が付加されているもの)

この分類は割と難しいのですが,あくまで本人の主観で分類してもらいました。たとえば,「私はのんびり屋である」という記述の場合,書いた本人がそれを肯定的に捉えていれば肯定感情に,困ったことだと捉えていれば否定感情に,両方で捉えていれば両価感情に分類してもらいました。
さて,この整理で,中性感情が多い人は自分自身に対して感情的になることに防衛的であるといわれています。肯定感情が多い人はセルフエスティームが高く,明るい性格の人が多いといわれています。否定感情が多い人はセルフエスティームが低く,劣等感を持ちやすいといわれています。両価感情が多い人は自分に迷いが生じやすいといわれています。

すべて,「といわれています」と書いたのは,これは,この検査をした時点でのことであり,あくまで一般論だからです。だからこの検査の結果で,がっかりしたり喜んだりすることはありません。また,こうした検査でわかる傾向や特徴には善悪はないことと変わりうることをきちんと伝えました。自分のそのときの傾向を知ることによって,自分が変わっていくことの手がかりにしてほしい,そして,新たな自己と自己概念の形成に役立ててほしいと話しました。

「自分とつきあう」という名前のゼミ。もし,自分がもう変われない,成長できないとしたら「自分とつきあう」なんてしんどい。変わっていけるから,つきあえるんだ!そういったらみんな肯いていました。

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コメント

ctさん、こんにちはぁ~

すっごい興味がある記事です
一瞬、私も高校生の3名と共に成長したいなぁ~と
思いました。
でも、一年間を通して出来るか?とすぐに不安になってしまいましたよ。

分かち合ってくださることに感謝!

投稿: Lucia | 2006年5月16日 (火) 18時21分

>>Luciaさんへ

読んで下さってありがとうございます。

>一瞬、私も高校生の3名と共に成長したいなぁ~と
思いました。

僕自身,生徒たちと共に成長したいと願い,このゼミをやっています。

>でも、一年間を通して出来るか?とすぐに不安になってしまいましたよ。

はい。担当者の僕も,そんなに変わらない気持ちです。

それにしても!
フランス語,スペイン語,中国語,韓国語,ギター,音楽鑑賞,スローフーズ(作物を作って食べる),落語などなど,
おもしろそうなゼミが18もある中,
最もまじめそうで,けっこうしんどそうなこのゼミを
第一希望で選んだ生徒が愛おしいです。

投稿: ct(MAGIS) | 2006年5月16日 (火) 18時43分

こんばんわ。デザイン、ステキになりましたね!
タイトル部にMAGISって!かっこいいです。ご自身のデザインですか?

さて、この記事、興味もてました。
私も書いてみようかなと思い・・・

私は女です、私は多忙です、私はしんどいです、私は仕事が好きです、私は休みたいです、私は恋がしたいです、私は将来が不安です、

まだまだ、かけそうです。
しかし、○○したい、という欲望ばかりですが、これはまずいのでしょうか?

投稿: piyo | 2006年5月16日 (火) 23時46分

>>piyoさんへ

>デザイン、ステキになりましたね!
>タイトル部にMAGISって!かっこいいです。ご自身のデザインですか?

ありがとうございます。
いままではココログの既成のテンプレートでしたが,
今回は自分でつくってアップしました。
まだまだですが,まあ,気に入っています。

>しかし、○○したい、という欲望ばかりですが、これはまずいのでしょうか?

いいえ。全然まずくないですよ。
そういう自分に気づいたのですから,良かったです。

投稿: ct(MAGIS) | 2006年5月17日 (水) 16時47分

TSTの具体的な分析の仕方、参考になりました。

私がかつて、受講生として体験した時は、

 社会的な役割を書いているかどうか、
 また、それがどの段階ででてくるかで、
 社会との心的距離を計ることができる。

という解説があったことが印象に残っていました。

正式なやり方かどうかわかりませんが、
個人的には「なるほど」とうなずけました。

投稿: もー | 2006年5月18日 (木) 01時17分

拝啓:小さな個人的なウェブサイトは、あなたが楽しむことを願って
私達のためのあなたの熱狂的なサポートをありがとう
Thank you for your support
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投稿: f88tw | 2017年7月 6日 (木) 15時09分

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