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2006年5月 9日 (火)

『窓』

060509 勤務校の国語科が『窓』という冊子を発行している。主に生徒の読書感想文と教員のエッセイからなる20数ページの冊子だ。ここのところ年一回のペースで年度末が近づく頃に配布される。私は毎年これを読むのを楽しみにしている。

一番最近は今年の2月に発行された。第12号。巻頭には同僚のI教諭の『発想の転換を』という評論文が載っている。1500字程度の短い文章だが,助詞の「が」と「は」に関する見事な考察が述べられている。その部分もとても魅力的で紹介したいのだが,一通り考察を表した後,彼は非常に大切なことを教えてくれているので,そちらを引用したい。

以上に述べたことは,広く言えば「発想の転換」ということになるのかもしれませんが,単に見方を変えてみる,とか,別の角度から見てみる,などということではなく,問題の立て方自体を見直してみることで,そもそも自分が解けないと思っていた問題自体が,実は問題として成り立っていなかったという場合があることの例なのではないかと思います。教育の世界では,答よりもその答に至る過程の方が大切だ,というようなことがよく言われますが,私は過程よりも問題の立て方自体の方がよほど大切だと思います。(栄光学園国語科『窓』第12号 2ページ)

私は数学教師なので,「最終的な答よりもそこに至る過程が大切」とよく口にするし,数学以外の日常生活においても,思わしい結果が出ないときなど,「でも過程の方が大事だから」などと言う。もちろん,その考えは間違えではないと思う。しかし,引用文中の「過程よりも問題の立て方自体の方がよほど大切」というI先生の指摘にはハッとさせられた。

話が飛ぶかもしれないが,人生とは何か?自分の人生には意味があるのか?という問題を考える場合にも,この問題の立て方は大きい。

その前に,こうした問に対する答として誰にでも共通の一般論は役に立たないことが多い。自分の人生に意味はあるのかと発する者は,意味が見いだせずにもがき苦しんでいる場合が多い。この問を発している者は時には生命を賭している。したがって具体的で実感できる答でなければ救いはない。

さて,人生の意味について,一般的な問い方,つまり,問題の立て方を180度転換させた人物は有名なV.フランクルだろう。春秋社『それでも人生にイエスと言う』(1993年)の中でフランクルは「私は人生にまだなにを期待できるか」ではなく「人生は私になにを期待しているか」を問えと書いている(27ページ)。そして,人生は一人一人に瞬間瞬間,具体的な問いを出しているという。言い換えると,私たちは一人一人がその瞬間瞬間,具体的な答(行動・選択)が求められているという。そして,正しい答があるのだという。しかしその答は,いわゆる普遍性を持ったものではないという。なぜなら,人は一人一人置かれる状況が異なるからである。言い換えれば人生から問われていることが違うのである。したがって一人一人答が違う。そして,一つ一つに固有の正しい答があり,人間にはその答を見つけ出す責任があるという。ある意味でなかなか厳しい。

私はフランクルのこの考えを大学生の頃知り,とても感動した。その上でいまはこう思う。瞬間瞬間人生から問われているのだから,全問正解なんてとても無理だ。ときにはずっと間違えた答しか出せないことだってある。いや,白紙解答だってある。もっといえば,問から逃げ出すときだってある。それでもいいではないか。(ここで「だって人間なんだから」と終わらせてしまったら相田みつを?) しかし,人生はいつまでも,逃げ出したくなるような過酷な問いかけばかりしているとは限らない。時には人生の方から解答を見せてくれるかもしれない。だけれども,自分に用意された人生から離れてしまっては,何も見出すことはできない。その人生に意味がなくなってしまう。わたしが(あなたが)いなければ,人生は実現しないのだ。だから,人生から離れることだけはやめたい。

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コメント

こんばんわ。トラバありがとうございました・・・。
発想の転換、BreakThrough!
大切ですね。
問いから逃げ出すときもあっていいのだと思います。
にんげんですから。みつをではないですが。

いつもながら、的確なトラバありがとございます。

二回よみかえしちゃいました。この記事。

投稿: ぴよ | 2006年5月13日 (土) 00時39分

>>ぴよさんへ

>発想の転換、BreakThrough!
大切ですね。

そうなんですよ。
同僚のI先生の文章に触発されました。
それと,フランクルの考え方も僕は好きです。

>問いから逃げ出すときもあっていいのだと思います。

そうそう。
実はこれからの時代は,このように「緩める」ことこそ,生きぬく術。
もう,「自分から逃げるな」なんていう精神論ではやっていけない時代だというのが,僕の考えです。

>いつもながら、的確なトラバありがとございます。

いや,そんなことないんですよ。
最近,記事が書けないんですよ。

>二回よみかえしちゃいました。この記事。

それはどうもありがとうございました。

投稿: ct | 2006年5月14日 (日) 22時55分

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