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2006年11月18日 (土)

青い梅

061118_1 アメリカインディアンのホビ族という一族の格言に

怒りは自分に盛る毒

というのがあるそうです。
(エリコ・ロウ『アメリカ・インディアンの書物よりも賢い言葉』扶桑社文庫p.138)

また,聖書には,

人の怒りは神の義を実現しない
(ヤコブの手紙1章20節 日本聖書協会・新共同訳聖書)

と書いてあります。

しかし,「怒り」という感情そのものは悪でも善でもありません。
そもそも感情に善悪はないのですから・・・。

「怒り」の引き起こす行動は時には社会を良くする原動力になります。
たとえば,今回の米国の中間選挙。
ブッシュのイラク政策に対するアメリカ市民の「怒り」によって,
12年ぶりに民主党に勝利をもたらしました。

また,「怒り」は,生きものが自分の生命を守るのには必要不可欠な感情です。
「怒り」を露わにして立ち向かわなければ自分や愛する人を守れないときもあります。

しかし,「怒り」は正しく用いないと,身を滅ぼしてまいます。
アメリカ・インディアンの格言「怒りは自分に盛る毒」は,
それを伝える素晴らしい格言ですし,
聖書で言えば,「人の」怒りは神の義の妨げとなるわけです。

哲学者の中島義道氏は,正しい怒り方とは,
なぜ自分が現在の状況に対して怒っているのかを正確に認識し表出することだといいます。
なぜ怒っているのかを,どこまでも正確に厳密に相手に言葉で伝える努力をしなければならないというのです。
(『カイン』講談社p.93参照)
そして,きちんと継続的に怒り続け,表現し続けることだと書かれています。
そうすると,怒りはますます高ぶるが,高ぶるだけでなく微妙に変質してきます。
これは,私も経験的にそうだと思います。
「怒りは消えないのだが,それがいわば理性的な確固たる怒りへと変質してくる」(同p.99)のです。

感情的で人から何か言われたら怯むような「怒り」では力にりません。
しかし,中島氏の語るような理性的な確固たる「怒り」は孤独を生きぬく力になり得ます。

冒頭に書いたように,アメリカインディアンは,怒りを自分に盛る毒だと表現しました。
しかし,毒の中には,手を加えたり,あるいは年月に晒したりすると,
栄養となるもの,美味しくなるものがあることもまた自然界は教えています。

私は「怒り」とは,梅のようなものだと思います。
青いうちは青酸が含まれていて猛毒ですが,熟させたり,上手く加工すると,
とても美味しくなりますし,体にも良い食べ物となります。

私は一度,梅酒用に母が漬けていた梅を,
まだ青いうちに大量に食べて死にそうになりました!

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コメント

MAGIS先生、こんにちは。
すごく勉強になりますです。
そうですね、私も「怒り」はただの
ネガティブなものではなく、自分から生まれ出ずる大事な感情だと思っています。
でも、その本質をちゃんと自分なりに分かっていることがとても大事だと思います。
言葉にも色々表現方法として選択肢があるのと
同じで、言語だけでは表せないような心の状態を
出すための方法ですよね。
やみくもに表現する事は、なにも「怒り」だけではなく「悲しみ」も「喜び」も「憂い」も「恐れ」、すべて自分で理解して、どうしてこの表現をする運びになったのかをきちんと考えて居れたらなと思います。

投稿: chika | 2006年11月18日 (土) 20時55分

薬は飲みすぎると毒になります。
私は、怒りはまさに人間にとって毒になると思います。なぜなら、
怒りは人を不快にすることがあっても、良い気持ちにさせることはないからです。
怒りは、度量の狭い人が価値観を押し付けているに過ぎません。
まさに自分の中の考えだけの愚かな行為だと思います。

(子供は、自分の欲求が満たされない時に主に怒りますが、
 あまりのしつこさに、ついついこちらも怒り、
 いつも自己嫌悪の毎日です。)

愚痴を言ったり、嫌悪する心が
どうかなくなりますように・・

投稿: lei | 2006年11月18日 (土) 21時53分

>>chikaさんへ

コメントをありがとう。

>そうですね、私も「怒り」はただの
>ネガティブなものではなく、自分から生まれ出ずる大事な感情だと思っています。

はい。そうなんです。
自分の「怒り」に,ちゃんと居場所を与えてあげることが必要だと思います。

>でも、その本質をちゃんと自分なりに分かっていることがとても大事だと思います。

そうそう。
これには多少時間がかかりますけれど,
「怒り」に居場所を与えてあれば,きっとその「怒り」と仲良くなれます。

投稿: ct(magis) | 2006年11月19日 (日) 16時28分

>>leiさんへ

コメントをありがとうございます。

>私は、怒りはまさに人間にとって毒になると思います。

はい。アメリカ・インディアンの格言もそれを伝えています。

>怒りは人を不快にすることがあっても、良い気持ちにさせることはないからです。

本当にそうですね。
自分も他人もいやな気持ちになります。

>怒りは、度量の狭い人が価値観を押し付けているに過ぎません。
>まさに自分の中の考えだけの愚かな行為だと思います。

ああ,それは「怒り」を感情的に相手にぶつけた場合ですね。
これは何の力にもなりません。
私はブログで,「怒り」を理性的なものへと変えることの効用を伝えたかったのです。
「怒り」は生のままでは毒です。
私も青い梅を食べて死にかけましたから。


投稿: ct(magis) | 2006年11月19日 (日) 16時37分

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